退職者からの引継ぎ教育|辞める前の3か月で渡しきる
退職の申し出があってから引継ぎ書を作らせる。分厚い書類ができあがるが、その人が辞めたあと、誰もそれを読んで作業できない。よくある結末です。
引継ぎ書を作ることと、その作業をできる人を作ることは別です。退職者からの引継ぎは、書類仕事ではなく教育として組むほうがうまくいきます。この記事では、退職者からの引継ぎ教育を、洗い出し、渡す相手の決定、3か月の割り振り、記録の順に整理します。
この記事の内容(8項目)
- 退職者の引継ぎは、書類より人に渡す
- 作業を1回はやらせる
- 書類は、やらせたあとで直す
- 期間は3か月を目安にする
- 洗い出しは、その人の1年をたどる
- 年に1回の作業を、必ず拾う
- 不定期の対応を聞き出す
- 外部との関係も書き出す
- 渡す相手は、作業ごとに決める
- やめる判断も、この機会に行う
- 後任の負担を見ておく
- 資格が要る作業は、先に確認する
- 3か月の割り振り方
- 3か月目は、本人に手を出させない
- 月次の作業は、必ず2回経験させる
- 期間が足りないときは、優先順位で絞る
- 引継ぎの進み具合を、記録で追う
- 説明済みで完了にしない
- 週に1回、進み具合を見る
- 教えた内容は、指導記録に残す
- 判定して、単独作業の許可を出し直す
- 異常時の対応を、必ず渡す
- 判定してから、許可を出す
- 辞めた後の相談先を決めておく
- 同じことを繰り返さないために
- この機会に、動画に撮っておく
- 1人しかできない作業を、洗い出す
- 次の2人目を、計画に入れる
- よくある質問
退職者の引継ぎは、書類より人に渡す
書類だけで渡すと、読んだ人が実際にできるかどうかは分かりません。やらせてみて、できることを確かめるところまでが引継ぎです。
書類で渡す
手順書と引継ぎ書を作って提出。読んでも、実際にやると詰まる。
聞きたくても、もう本人はいない。
結局、外部に頼むことになる。
教育として渡す
後任が実際にやり、本人が横で見て直す。
できることを確かめてから送り出せる。
書類は補助として残る。
作業を1回はやらせる
説明を聞いただけでは、抜けに気づけません。後任が実際にやって、本人が見て直すという回を最低1回は取ります。ここで初めて、書類に書かれていないことが出てきます。
書類は、やらせたあとで直す
先に完璧な書類を作ろうとすると時間が足りません。まず教えて、詰まったところを書類に足す順番にすると、実際に使える手順書になります。
期間は3か月を目安にする
1か月では、月次や四半期の作業が回ってきません。3か月あれば、月次の作業を2、3回は経験できます。申し出から退職日まで期間が短い場合は、優先順位で絞ります。
洗い出しは、その人の1年をたどる
「担当している業務を書き出してください」と頼むと、毎日やっていることしか出てきません。1年をたどると、忘れられている作業が出てきます。
| 頻度 | 洗い出し方 | 見落としやすさ |
|---|---|---|
| 毎日 | 本人が最初に書く | 低い |
| 週次 | 1週間の予定表から拾う | 低い |
| 月次 | 月の予定と、過去3か月の記録から | 中 |
| 四半期・年次 | 1年のカレンダーを見ながら聞く | 高い |
| 不定期 | 「困ったときにやること」で聞く | いちばん高い |
年に1回の作業を、必ず拾う
年次の棚卸し、決算期の処理、法定の届け出といった作業は、本人が「業務」として意識していないことがあります。1年のカレンダーを見ながら聞くと出てきます。
不定期の対応を聞き出す
「トラブルが起きたときに、あなたに連絡が来ることはありますか」と聞くと、記録に残っていない役割が出てきます。ここがいちばん引き継がれずに消えます。
外部との関係も書き出す
取引先の担当者、講習機関の窓口など、その人が個人的につながっている先があります。連絡先だけでなく、経緯も含めて渡します。
渡す相手は、作業ごとに決める
1人の後任にすべてを渡すと、その人が回らなくなります。作業ごとに、誰に渡すかを決めます。
| 作業の性質 | 渡し方 |
|---|---|
| 毎日ある中心的な作業 | 後任1人に集中して渡す |
| 月次・年次の作業 | 複数人に分ける。1人が抜けても止まらない |
| 誰でもできる作業 | この機会に他の人へ分散する |
| そもそも要らない作業 | やめる判断をする |
やめる判断も、この機会に行う
長く続いているだけで、必要性がはっきりしない作業があります。引継ぎの前に「これはやめられませんか」と一度聞くと、渡す量が減ります。
後任の負担を見ておく
後任にも自分の仕事があります。引き受ける時間が業務として確保されているかを先に見ないと、引継ぎが後回しになります。
資格が要る作業は、先に確認する
退職者が持っていた資格が必要な作業は、後任が資格を持っていなければ引き継げません。洗い出しの段階で、資格の要否を確認します。取得に数か月かかるものは、すぐ動きます。
3か月の割り振り方
期間があっても、計画が無ければ最後の2週間に集中します。3か月を3つに分けて考えます。
3か月目は、本人に手を出させない
最後まで本人が手伝うと、できているように見えて実はできていない、という状態のまま退職日を迎えます。3か月目は相談だけにして、後任にやり切らせます。
月次の作業は、必ず2回経験させる
1回目は見ながら、2回目は自分で。2回やると、手順が身に付きます。3か月の期間を取る理由がここにあります。
期間が足りないときは、優先順位で絞る
2週間しか無い場合、全部は渡せません。止まると困る作業から順に渡し、残りは書類と連絡先の共有にとどめるという判断をします。渡せなかったものは記録に残します。
引継ぎの進み具合を、記録で追う
口頭で進めると、何が終わって何が残っているか分からなくなります。作業ごとに、どこまで渡したかを記録します。
| 段階 | 状態 | 印 |
|---|---|---|
| 1 | 説明を受けた | 説明済み |
| 2 | 見ながらやった | 実施(補助あり) |
| 3 | 1人でやった | 実施(単独) |
| 4 | 1人でできることを確認した | 完了 |
説明済みで完了にしない
説明を受けただけの作業は、まだ引き継がれていません。1人でやったところまで進んで初めて完了と決めておくと、退職日の前に足りない部分が見えます。
週に1回、進み具合を見る
3か月あると、途中で忘れます。週1回、5分だけ進み具合を確認すると、遅れが分かります。残り1か月の時点で未着手のものがあれば、優先順位を入れ替えます。
教えた内容は、指導記録に残す
後任が詰まった場所は、次にその作業を教えるときにも同じところで詰まります。指導記録として残しておくと、将来また誰かに渡すときに使えます。書き方は指導記録の書き方にまとめています。
判定して、単独作業の許可を出し直す
引継ぎが終わったら、後任がその作業を1人でできる状態かを確かめます。説明を受けたことと、任せてよいことは別です。
| 確認すること | どう確かめるか |
|---|---|
| 手順どおりにできるか | 作業ごとの確認表で判定する |
| 必要な資格を持っているか | 資格と有効期限を確認する |
| 異常時に対応できるか | 過去に起きた異常を伝えて、対応を聞く |
| 相談先があるか | 本人が辞めた後の連絡先を決めておく |
異常時の対応を、必ず渡す
通常の手順は書類にできますが、「こういうときはこうする」という判断は、聞かないと出てきません。過去1年に起きた異常を思い出してもらい、そのときの対応を渡します。
判定してから、許可を出す
資格が要る作業や危険を伴う作業は、判定を経て単独作業の許可を出し直します。前任の許可は、後任には適用されません。判断の条件は単独作業の許可にまとめています。
辞めた後の相談先を決めておく
本人が辞めたあとに分からないことが出たとき、誰に聞くかを決めておきます。社内に相談先が無い作業は、まだ引き継げていません。
同じことを繰り返さないために
1人の退職で慌てるのは、その作業が1人しかできない状態だったからです。引継ぎを機に、次に備えます。
| やること | 効き方 |
|---|---|
| 1人しかできない作業を数える | 次に危ないところが分かる |
| 手順書を作る、動画に撮る | 次の引継ぎが軽くなる |
| 2人目を育てる計画を立てる | そもそも慌てなくなる |
| 引継ぎの記録を残す | 次に同じ作業を渡すときに使える |
この機会に、動画に撮っておく
本人がいるうちにしか撮れません。手の動きや力の入れ方が大事な作業は、短い動画に残すと、次に教えるときに使えます。教材の管理は教材の管理で扱っています。
1人しかできない作業を、洗い出す
引継ぎの洗い出しをすると、その人しかできなかった作業が並びます。他の人についても同じ状態が無いかを、この機会に確認します。
次の2人目を、計画に入れる
後任1人に渡して終わりにすると、その人が辞めたときに同じことが起きます。次の1年で2人目を育てる計画を立てるところまでやると、繰り返しになりません。
よくある質問
- Q. 引継ぎ書を作らせれば、引継ぎは足りますか?
- 書類を作ることと、その作業をできる人を作ることは別です。書類だけで渡すと、読んだ人が実際にやると詰まり、そのときには本人がいません。後任が実際にやって本人が横で見て直す回を最低1回は取り、書類はそのあとで詰まった点を足す順番にすると、実際に使えるものになります。
- Q. 引継ぎの期間はどのくらい必要ですか?
- 3か月を目安にしてください。1か月では月次や四半期の作業が回ってきません。3か月あれば月次の作業を2、3回は経験でき、1回目は見ながら、2回目は自分でという形が取れます。期間が短い場合は、止まると困る作業から順に渡し、残りは書類と連絡先の共有にとどめる判断をしてください。
- Q. 担当業務の洗い出しで、抜けを防ぐ方法はありますか?
- 1年のカレンダーを見ながら聞いてください。「担当業務を書き出してください」と頼むと、毎日やっていることしか出てきません。年次の棚卸しや決算期の処理、法定の届け出は本人が業務として意識していないことがあります。あわせて「トラブルが起きたときに、あなたに連絡が来ることはありますか」と聞くと、記録に残っていない役割が出てきます。
- Q. 後任は1人に決めたほうがよいですか?
- 作業ごとに決めることをおすすめします。毎日ある中心的な作業は後任1人に集中して渡し、月次や年次の作業は複数人に分けると、1人が抜けても止まりません。あわせて、この機会に「これはやめられませんか」と一度聞くと、渡す量そのものが減ります。
- Q. 引継ぎの進み具合は、どう管理すればよいですか?
- 作業ごとに、説明済み、補助ありで実施、単独で実施、完了の4段階で印を付けてください。説明を受けただけの作業はまだ引き継がれていないため、1人でやったところまで進んで完了とします。週1回5分の確認で、残り1か月の時点で未着手のものがあれば優先順位を入れ替えます。
- Q. 最後まで本人に手伝ってもらったほうがよいですか?
- 3か月目は相談だけにして、後任にやり切らせてください。最後まで本人が手伝うと、できているように見えて実はできていない状態のまま退職日を迎えます。3か月目に詰まったことこそが、本当の引継ぎ漏れです。
- Q. 引継ぎが終わったあと、すぐ作業を任せてよいですか?
- 説明を受けたことと、任せてよいことは別です。作業ごとの確認表で判定し、必要な資格と有効期限を確認してから任せてください。資格が要る作業や危険を伴う作業は、前任の許可が後任に適用されないため、あらためて単独作業の許可を出す必要があります。あわせて、本人が辞めた後の相談先を決めておいてください。
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