再教育の実施|いつ・誰に・どこまで教え直すかの決め方と記録
一度教えて、できるようになったはずの作業で不良が出た。もう一度教えることになるが、本人にどう伝えるかで気を使う。再教育が「できていない人へのやり直し」として扱われていると、こうなります。
実際には、再教育が必要になる場面の多くは本人のせいではありません。手順が変わった、長く離れていた、教え方が足りなかった。この記事では、再教育の実施を、必要になる場面、対象者の決め方、範囲の絞り方の順に整理します。
この記事の内容(11項目)
- 再教育を実施するのはいつか。必要になる4つの場面
- 不具合のときも、まず手順を疑う
- 定期の再教育は、負担を軽くする
- 対象者は、名指しではなく条件で決める
- 条件の例をいくつか決めておく
- 不具合が起きたときは、範囲を先に決める
- 対象から外す人も、記録に残す
- 範囲は、全部やり直さずに絞る
- 確認表で、落ちた項目だけを見る
- 本人に、どこを見るかを先に伝える
- 教えたあと、その場で確認する
- 手順を変えたときの再教育は、周知とセットにする
- 改訂の記録に、再教育の要否を書く欄を作る
- 全員に伝わったかを、名前で確認する
- 単独作業の許可も、見直す
- 古い手順書を、回収する
- 不具合のあとの再教育は、原因を見てから決める
- 「知らなかった」以外は、再教育では直らない
- 再教育を、処分の代わりにしない
- 複数人が同じ間違いをしているなら、教育の問題
- 再教育の記録は、理由まで残す
- 理由の欄を、選択式にする
- 同じ人が何度も出てきたら、見方を変える
- 同じ作業が何度も出てきたら、手順を疑う
- 指導記録にも、内容を残す
- 再教育を、責める場にしない
- 理由を先に言う
- 対象が全員であることを伝える
- できていた項目も伝える
- 本人からの気づきを聞く
- 再教育の実施にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 再教育の実施に出てくる用語
- 再教育とは
- 再教育の実施と一緒に押さえておきたいこと
- 手順を変えたときの再教育は、省略した人の理由まで残す
- 機械を入れ替えたときは、実技を入れて教え直す
- 教え直したあとの判定を、力量の処置の有効性として残す
- よくある質問
再教育を実施するのはいつか。必要になる4つの場面
場面によって、教える内容も範囲も変わります。まず、どの場面に当たるかを見分けます。
| 場面 | きっかけ | 教える範囲 | 本人の要因か |
|---|---|---|---|
| 手順が変わった | 作業標準の改訂、設備の入れ替え | 変わった手順とその前後 | いいえ |
| 長く離れていた | 配置換え、休職、頻度の低い作業 | 危ない手順を中心に | いいえ |
| 不具合が起きた | 不良、ヒヤリハット、事故 | 原因になった手順 | 場合による |
| 定期 | 年1回、資格の更新に合わせて | 全項目を軽く | いいえ |
ポイントはここです。4つのうち3つは、本人の要因ではありません。ここを最初に伝えると、再教育が受け入れられやすくなります。
不具合のときも、まず手順を疑う
不良が出たときに、いきなり本人の再教育を決めると、原因が手順や道具にあった場合に見落とします。手順書どおりにやっていたのか、手順書自体が正しいのかを先に確認します。
定期の再教育は、負担を軽くする
年1回、全員に全項目をやり直すのは現実的ではありません。危ない手順だけを1回見る形にすると続きます。
対象者は、名指しではなく条件で決める
「あの人が心配だから」で決めると、本人には指摘に感じられます。条件を先に決めておくと、手続きとして扱えます。
名指しで決める
「Aさんに再教育を」本人は指摘されたと感じる。
他の人も対象かどうか
分からない。
条件で決める
「手順書を改訂したので、この作業をする全員に」
本人の問題ではないと伝わる。
対象も漏れない。
条件の例をいくつか決めておく
手順書を改訂したらその作業をする人全員、6か月以上その作業から離れていた人、資格の更新をした人。こうした条件を先に決めておくと、その都度悩みません。
不具合が起きたときは、範囲を先に決める
1人が起こした不良でも、同じ作業をする全員が同じ間違いをする可能性があります。本人だけを対象にするか、全員にするかを、原因を見てから決めます。
対象から外す人も、記録に残す
「この人は最近やったばかりなので対象外」と判断したなら、その理由を残します。あとで実施漏れと区別できます。
範囲は、全部やり直さずに絞る
最初から全部を教え直すと、時間がかかり、本人にも負担です。変わったところ、抜けたところだけを教えます。
| 場面 | 絞り方 | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 手順が変わった | 変更点と、その前後の手順だけ | 15分から30分 |
| 長く離れていた | 危ない手順と、間違えやすい手順 | 30分 |
| 不具合が起きた | 原因になった手順に絞る | 30分 |
| 定期 | 全項目を通しで1回 | 1時間 |
確認表で、落ちた項目だけを見る
どこができていないかは、作業ごとの確認表で判定すると分かります。落ちた項目だけを教え直せば、範囲がはっきりします。判定のしかたは習熟度の判定にまとめています。
本人に、どこを見るかを先に伝える
何を確認されるか分からないまま呼ばれると、身構えます。「この3手順だけ見ます」と先に言うと、短時間で終わります。
教えたあと、その場で確認する
説明だけで終わると、身に付いたか分かりません。教えた直後にやらせて、その場で判定します。再教育の記録は、この判定まで書いて1件です。
手順を変えたときの再教育は、周知とセットにする
手順書を直しても、すでに覚えている人は前のやり方を続けます。改訂と再教育は、必ずセットで動かします。改訂から周知までの流れは手順書の改訂と周知にまとめています。
改訂の記録に、再教育の要否を書く欄を作る
改訂したことと、再教育したことが別々に管理されていると、つながりません。改訂の履歴に「再教育の要否」と「実施日」の欄を持たせると、抜けが見えます。
全員に伝わったかを、名前で確認する
朝礼で伝えただけでは、休んでいた人に届きません。対象者の名前を並べて、伝えた人に印を付けると確実です。改訂の管理は教材の管理で扱っています。
単独作業の許可も、見直す
手順が変わったなら、許可の前提も変わっています。改訂のときに、その作業の許可を見直すかどうかを判断します。
古い手順書を、回収する
再教育をしても、現場に古い紙が貼ってあれば元に戻ります。回収まで含めて1件と決めておきます。
不具合のあとの再教育は、原因を見てから決める
不良が出たら再教育、と決めてしまうと、原因が別のところにあった場合に何度も繰り返します。原因のどこに当たるかを先に見ます。
| 原因 | 再教育で直るか | 本来やること |
|---|---|---|
| 手順を知らなかった | 直る | 再教育 |
| 手順は知っていたが、やらなかった | 部分的 | やりにくい理由を探す |
| 手順書が間違っていた | 直らない | 手順書を直す |
| 道具や設備の問題 | 直らない | 道具を直す |
| 時間が足りなかった | 直らない | 作業量を見直す |
「知らなかった」以外は、再教育では直らない
知っていたのにやらなかった場合、やりにくい理由があることがほとんどです。そこを直さずに再教育をしても、また同じことが起きます。
再教育を、処分の代わりにしない
再教育が実質的な処分として使われると、不具合の報告が上がらなくなります。報告した人が不利にならない扱いを守ります。
複数人が同じ間違いをしているなら、教育の問題
1人だけなら個別の対応ですが、2人以上が同じ間違いをしているなら、最初の教え方か手順書に原因があります。全員を対象にして、教材も直します。
再教育の記録は、理由まで残す
実施したことだけを残すと、あとで見たときに「できない人だった」という印象だけが残ります。なぜ再教育したのかを、必ず書きます。
| 残すこと | なぜ要るか |
|---|---|
| 実施日と対象者 | 実施したことの証拠 |
| 再教育の理由 | 手順変更なのか、不具合なのかで意味が違う |
| 教えた範囲 | どこをやり直したかが分かる |
| 判定の結果 | できるようになったかどうか |
| 教えた人 | 基準の確認ができる |
理由の欄を、選択式にする
自由記述にすると書かれません。手順変更、ブランク、不具合、定期、の4つから選ぶ形にすると、集計もできます。
同じ人が何度も出てきたら、見方を変える
特定の人に再教育が集中しているなら、教え方や作業の割り当てのほうを見直します。本人の努力の問題として扱い続けても解決しません。
同じ作業が何度も出てきたら、手順を疑う
作業ごとに集計して、再教育が多い作業があれば、手順書か作業そのものに無理があります。教育ではなく、作業のほうを直す対象です。
指導記録にも、内容を残す
再教育で何を教えたかは、通常の指導と同じように記録します。次に同じ作業を教える人が読める形にしておきます。
再教育を、責める場にしない
言い方ひとつで、受け取られ方が変わります。伝える順番を決めておくと、余計な緊張を生みません。
| 伝える順 | 言うこと |
|---|---|
| 1 | なぜ再教育をするのか(手順が変わった、など) |
| 2 | 対象は誰か(この作業をする全員、など) |
| 3 | どこを見るか(この3手順だけ) |
| 4 | どのくらいかかるか(30分) |
理由を先に言う
いきなり「もう一度確認します」と言われると、何か問題があったのかと感じます。理由を最初に言うだけで、印象がまったく変わります。
対象が全員であることを伝える
自分だけが呼ばれたと思うと、身構えます。「この作業をする全員に順番にやっています」と伝えると、手続きとして受け取られます。
できていた項目も伝える
確認して問題が無かった項目については、その場で伝えます。指摘だけで終わらせないと、次の再教育も受けてもらえます。
本人からの気づきを聞く
再教育の場は、本人が普段感じているやりにくさを聞く機会でもあります。「やりにくいところはありますか」と1問聞くと、手順を直す材料が出てきます。
そもそも研修に出られなかった人への対応は研修の欠席者フォローにまとめています。
再教育の実施にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
再教育の実施という言葉を定めた法令はありません。ただ、作業の内容を変えたときの教育や、危険な業務に就いている人へのくり返しの教育は、労働安全衛生法に定めがあり、ここ数年で見直しが続いています。2024年以降に一次情報で確かめられたものを日付順に並べます。
| 時期 | できごと | 根拠 |
|---|---|---|
| 2024年2月1日 | 貨物自動車のテールゲートリフターを使って荷を積み卸す業務が、特別教育の対象に加わった | 労働安全衛生規則36条5号の4 |
| 2024年4月1日 | 雇入れ時等の教育で、業種によって認められていた第1号から第4号(機械や原材料の危険性、安全装置や保護具、作業手順、作業開始時の点検)の省略がなくなった。作業内容を変更したときの教育も同じ条文で行う | 労働安全衛生規則35条 |
| 2025年5月14日 | 労働安全衛生法などの改正法(令和7年法律第33号)が公布された | 厚生労働省の改正の概要 |
| 2026年4月1日 | 改正法の主な規定が施行された。注文者や元方事業者などの措置の対象が、一人親方などを含む「作業従事者」に広がった | 厚生労働省の改正の概要 |
| 2026年5月25日 | 危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育に関する指針の一部改正が公示された(安全衛生教育指針公示第7号)。2027年4月1日から適用される | 厚生労働省の公示 |
| 2026年9月16日 | ISO 9001:2026 が発行された。2015年版からの移行期限は2029年9月30日とされている | ISO/TC 176 |
ポイントはここです。手順書を変えて作業のやり方が変わったときの再教育は、法令の「作業内容を変更したときの教育」と重なることがあります。2024年4月からは、作業手順や作業開始時の点検の項目を業種で省けなくなりました。どこまでが作業内容の変更にあたるかは作業ごとに判断が分かれるので、迷う場合は所轄の労働基準監督署に確かめ、判断した内容を再教育の記録に1行残しておくと安心です。
出典:労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)、岡谷労働基準監督署「労働安全衛生規則等の改正」(令和6年4月)、厚生労働省 労働安全衛生法等の改正の概要、安全衛生教育指針公示第7号、ISO/TC 176/SC 2。確認日は2026年10月3日です。個別の作業が法令の教育にあたるかは、所轄の労働基準監督署にご確認ください。
再教育の実施に出てくる用語
再教育の実施では、現場の言葉と法令の言葉が混ざります。どこで決まっている言葉かを添えて並べます。
再教育とは
再教育とは、一度教えて身についたはずの作業や知識を、もう一度教えることです。現場では「再指導」「教え直し」とも呼ばれます。法令上の定義はなく、この記事では手順の変更、ブランク、不具合、定期の4つの場面で行うものを再教育と呼んでいます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 再教育 | 一度教えた作業や知識を、もう一度教えること | 法令上の定義はない |
| 作業内容変更時の教育 | 労働者の作業内容を変更したときに、遅滞なく行う安全衛生教育。項目に「作業手順に関すること」「作業開始時の点検に関すること」がある | 労働安全衛生法59条2項、労働安全衛生規則35条 |
| 特別教育 | 危険又は有害な業務に就かせるときに行う教育。受講者や科目の記録を3年間保存する | 労働安全衛生法59条3項、労働安全衛生規則38条 |
| 定期教育・随時教育 | 危険有害な業務に就いている人に、一定期間ごとに行う教育が定期教育。取り扱う機械設備が新しいものに変わる場合などに行う教育が随時教育 | 労働安全衛生法60条の2、危険有害業務従事者に対する安全衛生教育の指針 |
| 力量 | 意図した結果を達成するために、知識及び技能を適用する能力 | JIS Q 9000:2015 3.10.4 |
| 処置の有効性の評価 | 必要な力量を身につけるための処置をとり、その処置が効いたかを評価すること | ISO 9001:2015 7.2 c) |
危険有害業務従事者への教育は、法令上は努力義務です(労働安全衛生法60条の2)。作業内容変更時の教育と特別教育は義務なので、社内の再教育の記録では、どちらにあたるかを分けて書いておくと、あとで確認されたときに迷いません。
再教育の実施と一緒に押さえておきたいこと
再教育の実施は、場面と範囲が決まれば半分は終わりです。上位の記事であまり触れられていない、実務で効く論点を3つ足しておきます。
手順を変えたときの再教育は、省略した人の理由まで残す
労働安全衛生規則35条2項では、項目の全部または一部について十分な知識と技能があると認められる人には、その項目の教育を省略できるとされています。省略した人がいるなら、誰をどの理由で省略したかを記録に書くと、実施漏れと区別できます。この記事の「対象から外す人も、記録に残す」と同じ考え方です。大きな改訂の扱いは手順書の改訂と周知でも扱っています。
機械を入れ替えたときは、実技を入れて教え直す
危険有害業務従事者への安全衛生教育の指針では、取り扱う機械設備が新しいものに変わる場合などに行う随時教育は、運転操作の方法のほか、点検整備などの実技に関する事項を加えたものとするとされています。説明だけで終わらせず、新しい機械で一度動かして、その場で判定する形にすると、指針の考え方にも合います。記録は個人別に保存するものとされているので、人ごとの研修管理表に1行足します。表の作り方と定期の目安は研修管理の方法にあります。
教え直したあとの判定を、力量の処置の有効性として残す
ISO 9001:2015 の 7.2 c) では、必要な力量を身につけるための処置をとり、とった処置の有効性を評価することが求められています。再教育はこの「処置」にあたります。教え直した直後の判定の結果を記録に書いておけば、処置が効いたかの証拠になります。判定の合格基準の決め方は習熟度の判定にまとめています。
よくある質問
- Q. 再教育は、どんなときに実施すべきですか?
- 主に4つの場面があります。手順が変わったとき、長くその作業から離れていたとき、不具合が起きたとき、定期の確認のときです。このうち3つは本人の要因ではないため、その点を最初に伝えると受け入れられやすくなります。
- Q. 対象者はどう決めればよいですか?
- 名指しではなく条件で決めてください。「手順書を改訂したので、この作業をする全員に」という形なら、本人の問題ではないと伝わり、対象の漏れもありません。手順書を改訂したら該当作業の全員、6か月以上離れていた人、といった条件を先に決めておくと、その都度悩みません。
- Q. 再教育では、最初から全部を教え直すべきですか?
- 絞ってください。手順が変わった場合は変更点とその前後だけ、長く離れていた場合は危ない手順と間違えやすい手順だけで足ります。作業ごとの確認表で判定して、落ちた項目だけを教え直すと範囲がはっきりします。15分から30分で終わることがほとんどです。
- Q. 不良が出たら、必ず再教育をすべきですか?
- 原因を見てから決めてください。手順を知らなかった場合は再教育で直りますが、手順書が間違っていた、道具に問題があった、時間が足りなかったという場合は再教育では直りません。知っていたのにやらなかった場合も、やりにくい理由を探すほうが先です。
- Q. 手順書を改訂したら、必ず再教育が必要ですか?
- 必要かどうかを判断する欄を、改訂の記録に作っておくことをおすすめします。改訂したことと再教育したことが別々に管理されていると、直した手順が現場に届きません。あわせて、現場に貼ってある古い紙を回収するところまで含めて1件としてください。
- Q. 再教育の記録には、何を残せばよいですか?
- 実施日と対象者に加えて、再教育の理由を必ず残してください。理由が無いと、あとで見たときに「できない人だった」という印象だけが残ります。手順変更、ブランク、不具合、定期の4つから選ぶ形にすると、書かれやすく集計もできます。
- Q. 特定の人に再教育が集中してしまいます。
- 本人の努力の問題として扱い続けても解決しません。教え方や作業の割り当てのほうを見直してください。また、作業ごとに集計して再教育が多い作業があれば、手順書か作業そのものに無理がある可能性が高くなります。その場合は教育ではなく、作業のほうを直す対象になります。
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