指導記録の書き方|次の人が読んで続けられる残し方
指導記録を開いてみたら、どのページにも「作業を教えた」「理解良好」としか書かれていない。書いた側は覚えているので困りませんが、引き継いだ人には何の役にも立ちません。
一般には、指導記録とは、いつ誰に何を教えたかを残す記録を指します。実務で効く記録には共通点があって、次に教える人が読んで、その日から続けられることです。この記事では、指導記録の書き方を、書く項目、書く時間、渡し方の順に整理します。用紙の形そのものは、テンプレートのページから無料でダウンロードできます。
期限が決まっている引継ぎでは、残し方の優先順位が変わります。辞める前の3か月で渡しきる進め方は退職者からの引継ぎ教育で扱っています。
この記事の内容(11項目)
- 指導記録に書くのは3項目でよい
- 「理解良好」と書かない
- 手順書の番号で書く
- 指導記録は、その日のうちに3行で書く
- 書く時間を、指導の一部として組み込む
- 紙でも電子でもよい
- 毎回書かない項目を決めておく
- 本人の言葉を、そのまま残す
- 要約すると、原因が消える
- 質問は、別の場所に集めてもよい
- 本人にも記録を見せる
- 指導記録と、計画表・確認表の役割を分ける
- 記録簿に達成の印を書かない
- 計画表には、記録の日付だけを返す
- 3つとも同じ人が管理しなくてよい
- 指導者が代わるときに渡すもの
- 記録が薄いと、引継ぎが作れない
- 引継ぎの1枚は5分で書ける
- 渡したことも記録に残す
- 指導記録が書かれなくなるときの直し方
- 記入例を1枚だけ貼る
- 読む場面を作る
- 書けない日は、空欄でよい
- 指導記録を、教え方の改善に使う
- 3人が同じところで止まったら、資料を直す
- 実際にかかった日数を、次の計画に使う
- 年に1回、まとめて振り返る
- 指導記録の書き方にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 指導記録の書き方に出てくる用語
- 指導記録の書き方と一緒に押さえておきたいこと
- 特別教育を兼ねるなら、受講者と科目を残す
- 雇入れ時教育は、記録の義務がなくても残しておく
- 指導記録は本人から開示を求められることがある
- よくある質問
指導記録に書くのは3項目でよい
項目を増やすと、書かれなくなります。教えた内容、つまずいた場所、次にやること。この3つがあれば、次の人が続けられます。
| 項目 | 書くこと | ありがちな書き方 |
|---|---|---|
| 教えた内容 | 手順書のどこを、どこまで | 「作業を教えた」 |
| つまずいた場所 | どの手順で止まったか、何を間違えたか | 「理解良好」 |
| 次にやること | 次回に確認すること、教える項目 | 空欄 |
ポイントはここです。つまずいた場所こそが、次の人にとっていちばん価値のある情報です。ここが空欄だと、次の人はまた最初から探すことになります。
「理解良好」と書かない
理解良好は、書いた人の印象で、事実ではありません。「限度見本との比較は自分で判断できた」「トルクの確認だけ2回間違えた」のように、できたことと間違えたことを分けて書きます。10文字増えるだけで、情報量は大きく変わります。
手順書の番号で書く
「前半を教えた」では、どこまでか分かりません。手順書の項目番号や見出しで書くと、次の人が続きから始められます。手順書があるなら、そこを引用するだけで済みます。
指導記録は、その日のうちに3行で書く
週末にまとめて書こうとすると、内容が薄くなります。指導した直後に3行だけ書くほうが、結果として使える記録が残ります。
まとめて書く
金曜に1週間ぶんを記入。細かいことは思い出せない。
「作業を教えた」で埋まる。
書くこと自体が負担になる。
その場で書く
指導のあと2分で3行。つまずいた場所が具体的に残る。
負担が小さいので続く。
週末にまとめる作業が消える。
書く時間を、指導の一部として組み込む
「指導30分」ではなく「指導30分+記録2分」で予定を組みます。記録の時間が業務に入っていないと、後回しになります。2分は、指導の時間から見れば誤差の範囲です。
紙でも電子でもよい
手段より、その場で書けることのほうが大事です。現場にパソコンが無いなら、紙で書いてあとから転記する形でも構いません。転記が続かないなら、紙のまま綴じておくほうが実際に残ります。
毎回書かない項目を決めておく
日付、氏名、指導者といった欄が毎回手書きだと、それだけで書く気が失せます。変わらない項目は、あらかじめ印刷しておくと、書くところが3行だけになります。
本人の言葉を、そのまま残す
指導者から見た評価だけを書くと、本人が何につまずいたのかが消えます。本人が言ったことを、言い換えずに書き留めます。
| 指導者の要約 | 本人の言葉 | 差 |
|---|---|---|
| 手順が分かっていない | 「どっちが先か毎回迷う」 | 手順書の順番が読みにくい可能性が出る |
| 確認が甘い | 「合格の見た目が分からない」 | 限度見本が要るという話になる |
| 覚えが悪い | 「前に聞いたときと言われ方が違う」 | 指導者どうしで教え方がずれている |
要約すると、原因が消える
指導者の言葉に直した瞬間、原因が本人の側に寄ります。本人の言葉のままなら、資料や手順のほうに原因がある可能性が残ります。「」で囲んで書くだけで足ります。
質問は、別の場所に集めてもよい
指導記録は1人ぶんの履歴なので、質問を横断して見るには向きません。よく出る質問は別に集めておくと、手順書や教材を直すときの材料になります。
本人にも記録を見せる
記録が指導者だけのものだと、評価されている感じが強くなります。本人が次回にやることを一緒に確認すると、記録が本人のためのものになります。
指導記録と、計画表・確認表の役割を分ける
1枚に全部書こうとすると、行が足りなくなります。3つの表で役割を分けると、どれも読めるようになります。
| 個別指導記録簿 | OJT計画表 | 作業習熟確認表 | |
|---|---|---|---|
| 1枚の単位 | 1回の指導 | 1人ぶんの3か月 | 1つの作業 |
| 書くもの | 教えた内容と反応 | 項目、期限、達成の印 | 手順ごとの合否 |
| いつ書くか | 指導のたび | 週1回 | 判定のとき |
| 誰が読むか | 次に教える人 | 上司、本人 | 判定者、監査 |
記録簿に達成の印を書かない
指導記録に合否を書き込むと、判定の根拠がどこにあるか分からなくなります。できるようになったかどうかは、確認表で判定します。役割を混ぜると、両方が中途半端になります。
計画表には、記録の日付だけを返す
計画表に指導の中身まで書くと、1人ぶんが数ページになります。実施した日付だけを計画表に戻すと、進み具合が一目で分かります。中身を見たい人は記録簿を開きます。
3つとも同じ人が管理しなくてよい
記録簿は指導者、計画表は上司、確認表は判定者と、書く人が分かれていて構いません。それぞれの持ち主を決めておくと、誰も書かない状態を避けられます。
指導者が代わるときに渡すもの
指導記録がいちばん役に立つのは、教える人が代わるときです。渡すのは記録そのものではなく、要点をまとめた1枚です。
記録が薄いと、引継ぎが作れない
「作業を教えた」しか書かれていない記録からは、引継ぎの1枚が作れません。普段の記録が、そのまま引継ぎの材料になります。ここが、その場で書くもう1つの理由です。
引継ぎの1枚は5分で書ける
記録がそろっていれば、直近の数回を読んで要点を拾うだけです。渡す項目が決まっていれば、5分で終わります。渡し方はOJTが進まない原因でも扱っています。
渡したことも記録に残す
いつ誰から誰へ引き継いだかが残っていないと、あとで進み具合を追えません。引継ぎの日付と、前後の担当者を記録簿にも1行入れます。
指導記録が書かれなくなるときの直し方
始めたときは書かれていたのに、いつの間にか止まる。よくある流れです。
| 症状 | よくある原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 1か月で止まった | 項目が多く、書くのに時間がかかる | 3項目に絞る |
| 内容が毎回同じ | 何を書けばよいか分かっていない | 記入例を1枚、現場に貼る |
| まとめ書きになる | 記録の時間が業務に入っていない | 指導の予定に記録2分を足す |
| 指導者だけが書いている | 本人が見る場面が無い | 次回の予定を本人と確認する |
| 誰も読み返さない | 読む場面が決まっていない | 引継ぎと月1回の進捗確認で開く |
記入例を1枚だけ貼る
書き方の説明を配るより、良い記録の実物を1枚貼るほうが早く伝わります。実際に書かれたもののほうが、まねしやすくなります。
読む場面を作る
書いても誰も読まない記録は、いずれ止まります。月1回の進捗確認で開く、引継ぎで使うと決めておくと、書く意味が伝わります。
書けない日は、空欄でよい
毎日書くことを求めると、書くことが無い日に作り話が入ります。指導した日だけ書くと決めておくほうが、記録の質が保てます。
指導記録を、教え方の改善に使う
1人ぶんの履歴として使うだけでなく、横に読むと別の情報が出てきます。
| 読み方 | 分かること | 次の一手 |
|---|---|---|
| 同じ項目のつまずきを数える | 教材や手順書の弱点 | 資料を直す |
| 指導者ごとに読む | 教え方のばらつき | 基準を確認表でそろえる |
| 指導回数を数える | 負担の偏り | 次の期の割り当てを変える |
| 期間を見る | 習得までにかかる実際の日数 | 次の計画の期限を現実に合わせる |
3人が同じところで止まったら、資料を直す
複数の人が同じ手順でつまずいているなら、教え方より資料に原因があります。人を教え直すより、手順書を1か所直すほうが効きます。
実際にかかった日数を、次の計画に使う
記録には、教え始めてから合格までの実日数が残っています。この数字を次の計画の期限に使うと、達成できない計画を作らずに済みます。判定の残し方は習熟度の判定で扱っています。
年に1回、まとめて振り返る
毎回分析する必要はありません。年度末に1年ぶんを開いて、直す資料を数点決めるだけで十分です。ここまでやると、記録が溜まるだけの紙でなくなります。
集合でやる研修の出欠を残す形は研修の出席簿にまとめています。
指導記録の書き方にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
指導記録の書き方そのものを決めた法令はありません。ただ、現場で教える中身のうち、安全衛生教育は労働安全衛生法で決まっていて、ここ数年で対象が少しずつ広がっています。指導記録に何を残すかを考えるときの前提として、日付順に並べます。
| 日付 | 何が変わったか | 根拠 |
|---|---|---|
| 2023年4月1日 | 職長等の教育を行うべき業種に、食料品製造業(たばこ製造業を除く)と、新聞業・出版業・製本業・印刷物加工業が加わった | 労働安全衛生法施行令19条 |
| 2024年4月1日 | 雇入れ時・作業内容変更時の教育で、一部の業種が1〜4号(危険性の取扱い、保護具、作業手順、作業開始時の点検)を省略できた定めが削られた。全業種で8項目が対象 | 労働安全衛生規則35条(令和4年厚生労働省令第91号) |
| 2025年5月14日 | 改正労働安全衛生法が公布された(令和7年法律第33号)。一人親方などを含めた保護の広がりが柱の1つ | 厚生労働省「改正法の概要」 |
| 2026年5月27日 | 令和7年の労働災害の確定値が公表された。休業4日以上の死傷者は135,333人、死亡者は700人(過去最少) | 厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」 |
| 2027年4月1日(施行予定) | 作業従事役員等が、労働者と同じ場所で特別教育の対象業務に就くときは、特別教育を受けることになる | 労働安全衛生法59条4項(e-Gov法令検索の未施行の改正) |
ポイントはここです。雇入れ時教育は2024年4月から全業種で8項目すべてが対象になっています。新人の指導記録に、どの項目をいつ教えたかが手順書の番号で残っていれば、教育の抜けを後から確かめられます。
出典:e-Gov法令検索(労働安全衛生規則)/e-Gov法令検索(労働安全衛生法施行令)/e-Gov法令検索(労働安全衛生法)/厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の概要」/厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」
確認日は2026年10月3日です。自社の教育が対象になるかは、所轄の労働基準監督署に確認してください。
指導記録の書き方に出てくる用語
指導記録の書き方を調べると、教育の名前がいくつも出てきます。法令で決まっているものと、決まっていないものを分けておきます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 指導記録 | 法令上の定義はない。いつ誰に何を教え、どこでつまずいたかを残す社内の記録 | なし |
| OJT | 法令上の定義はない。仕事をしながら上司や先輩が教える育て方を指す言い方 | なし |
| 雇入れ時等の教育 | 雇い入れたときと作業内容を変更したときに、遅滞なく行う安全衛生教育。8項目のうち業務に必要なもの | 安衛法59条1項・2項、安衛則35条 |
| 特別教育 | 危険・有害な業務に就かせるときに行う教育。対象業務は安衛則36条に列挙 | 安衛法59条3項、安衛則36条 |
| 特別教育の記録 | 受講者・科目等の記録を作り、3年間保存する | 安衛則38条 |
| 職長等の教育 | 新たに職務につく職長など、作業中の労働者を直接指導・監督する者への教育。対象業種は政令で決まる | 安衛法60条、安衛令19条 |
| 作業手順書 | 法令上の定義はない。雇入れ時教育の項目に「作業手順に関すること」がある | 安衛則35条1項3号 |
指導記録の書き方と一緒に押さえておきたいこと
指導記録の書き方は、社内で自由に決めてよいものです。そのうえで、法令や個人情報の扱いとぶつかりやすい点が3つあるので、書式を作るときに押さえておくと安心です。
特別教育を兼ねるなら、受講者と科目を残す
フォークリフトや玉掛けなどの特別教育を現場の指導で行うときは、受講者・科目等の記録を作って3年間保存すると定められています(安衛則38条)。ふだんの指導記録で兼ねるなら、どの特別教育の、どの科目を何時間行ったかが読み取れる欄を足しておきます。「作業を教えた」だけでは、この記録としては足りません。
雇入れ時教育は、記録の義務がなくても残しておく
雇入れ時等の教育(安衛則35条)には、特別教育のような記録・保存の定めは置かれていません。それでも、8項目のどれをいつ教えたかが残っていないと、教育を行ったことを後から示せません。指導記録の「教えた内容」欄に35条の項目番号を添えるだけで、新人教育の記録として使えるようになります。
指導記録は本人から開示を求められることがある
指導記録は特定の個人についての記録なので、個人情報保護法の保有個人データにあたる場合、本人は開示を請求できます(個人情報保護法33条)。本人に見せても困らない言葉で書くと決めておくと、この記事で勧めている「本人にも記録を見せる」運用ともそろいます。人柄の評価や推測は書かず、できたこと・間違えたこと・本人の言葉に絞るのが安全です。
よくある質問
- Q. 指導記録には何を書けばよいですか?
- 教えた内容、本人がつまずいた場所、次にやることの3つで足ります。項目を増やすほど書かれなくなるため、この3つに絞ることをおすすめします。とくにつまずいた場所は、次に教える人にとっていちばん価値のある情報になります。
- Q. 「理解良好」という書き方はよくないのですか?
- 書いた人の印象であって事実ではないため、次の人には使えません。できたことと間違えたことを分けて、具体的に書いてください。「限度見本との比較は自分で判断できた」「トルクの確認だけ2回間違えた」のように書くと、10文字増やすだけで情報量が変わります。
- Q. 指導記録はいつ書くのがよいですか?
- 指導した直後に2分程度で書くことをおすすめします。週末にまとめて書くと細かいことを思い出せず、内容が薄くなります。指導の予定を組むときに「指導30分と記録2分」として組み込んでおくと、後回しになりません。
- Q. 指導記録簿と作業習熟確認表は両方必要ですか?
- 役割が違うので分けて持つことをおすすめします。指導記録簿は1回ごとの指導内容を次の人へ渡すためのもの、作業習熟確認表は手順ごとに合否を判定するためのものです。記録簿に合否を書き込むと、判定の根拠がどこにあるか分からなくなります。
- Q. 本人にも指導記録を見せたほうがよいですか?
- 見せることをおすすめします。記録が指導者だけのものだと、本人には評価されているように感じられます。次回にやることを一緒に確認する形にすると、記録が本人のためのものになり、準備も進みます。
- Q. 指導記録が書かれなくなってしまいました。どう立て直しますか?
- 項目が多すぎないか、記録の時間が業務に入っているか、読む場面があるかの3つを見てください。書式を簡単にして、良い記録の実物を1枚現場に貼り、月1回の進捗確認と引継ぎで必ず開く、という形にすると戻ります。書き方の説明を配るより、実物を1枚見せるほうが早く伝わります。
- Q. 指導記録は毎日書かなければいけませんか?
- 指導した日だけで構いません。毎日書くことを求めると、書くことが無い日に形だけの記述が入り、記録全体の信頼性が下がります。指導のあった日に3行、その場で書く。この形にしておくほうが、あとから読んで使える記録になります。
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