教材の管理|一覧の5列と版の付け方、古い版の残し方、他人の著作物を使うときの線引き
手順書は共有フォルダ、動画は誰かのスマートフォン、要点をまとめた紙は現場のクリアファイル。教材が3か所に分かれていて、どれが最新か誰も言えない。よくある状態です。
一般には、教材の管理とは、教えるときに使う手順書や動画を、必要なときに最新版で取り出せるようにしておくことを指します。ここでつまずく理由は、置き場所を増やしたことではなく、どこに何があるかの一覧を持っていないことです。この記事では、教材の管理を、一覧の作り方、版の付け方、古い版の扱いの順に整理します。
この記事の内容(11項目)
- 教材の管理は、置き場所より一覧から始める
- 一覧に載せる列は5つで足りる
- 紙も動画も、同じ一覧に載せる
- 最初は、よく使う作業だけでよい
- 版は、日付と番号の両方で書く
- ファイル名に版を入れる
- 版を上げる条件を決めておく
- 改訂の履歴は、別に持つ
- 古い版は、消さずに隔離する
- 現場の紙は、回収して差し替える
- 個人が持っているコピーを、増やさない
- 草案を、共有フォルダに置かない
- 動画と紙は、役割で使い分ける
- 動画は短く切る
- 動画にも版を付ける
- 両方作る必要はない
- 教材を直す材料は、質問と指導記録から拾う
- 3回出た質問は、教材の穴
- 指導記録を横に読む
- 直したら、質問の記録に印を付ける
- 教材の担当を、作業ごとに決める
- 担当は、その作業をよく知る人にする
- 担当が代わるときは、一覧を渡す
- 使われていない教材は、外す
- 教材が無い作業も、一覧に載せる
- 教材の管理が止まるときの直し方
- 探すより聞くほうが早い状態を直す
- 教材を直したら、再教育が要るかを判断する
- 完璧な教材を目指さない
- 教材の管理にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 教材の管理に出てくる用語
- 教材の管理と一緒に押さえておきたいこと
- 社員が作った教材の著作者は、通常は会社になる
- 他人の本や記事を教材に入れるときは、許諾か引用で
- 教材の管理にシステムやアプリが要るかは、一覧で困ってから決める
- よくある質問
教材の管理は、置き場所より一覧から始める
散らばった教材を1か所に集める作業は、時間がかかるうえに途中で止まります。先に、どこに何があるかを書いた一覧を1枚作るほうが早く効きます。
集めることから始める
全教材を1つのフォルダへ移す。移す作業に数週間。
途中で止まると、
2か所に分かれた状態が残る。
一覧から始める
教材名と置き場所を1枚に。半日で作れて、その日から使える。
集めるのは、後からでよい。
散らばったままでも迷わない。
一覧に載せる列は5つで足りる
教材名、対象の作業、置き場所、版と改訂日、担当者。この5つがあれば、探せて、最新かどうかが分かります。列を増やすと、作るのも保つのも大変になります。
紙も動画も、同じ一覧に載せる
形式ごとに一覧を分けると、どちらを見ればよいか分かりません。1つの作業に対して、使える教材が全部並ぶ形にします。動画の置き場所は、URLや保管場所を書いておきます。
最初は、よく使う作業だけでよい
全作業ぶんを一度に作ろうとすると終わりません。新人に最初に教える10作業から始めると、その日から使われます。使われる一覧は、そのあと自然に増えます。
版は、日付と番号の両方で書く
「最新版」と書かれたファイルが2つある、という事故を防ぎます。版の番号と改訂日をセットで書きます。
| 書き方 | 起きること |
|---|---|
| 最新版、新、修正版 | どれが新しいか分からない。2つ並ぶ |
| 日付だけ | 同じ日に2回直すと区別できない |
| 番号だけ | いつのものか分からない。古さの判断ができない |
| 番号と日付 | 第3版 2026-08-30。並べ替えも比較もできる |
ファイル名に版を入れる
中身にだけ版を書くと、開かないと分かりません。ファイル名の末尾に版と日付を入れると、一覧で見た瞬間に判断できます。紙の教材なら、表紙の右上に書きます。
版を上げる条件を決めておく
誤字の修正まで版を上げると、番号がすぐ大きくなります。作業のやり方が変わったときだけ版を上げると決めると、版の重みが保てます。表現の直しは日付だけ更新します。
改訂の履歴は、別に持つ
何をなぜ直したかを教材そのものに書き足すと、本文が読みにくくなります。改訂の履歴は別の表に残すと、教材はきれいなまま保てます。周知の状況も同じ表で追えます。直したことを現場に届ける手順は手順書の改訂と周知にまとめています。
古い版は、消さずに隔離する
古い版をそのまま残すと、間違って使われます。かといって消すと、なぜ変えたのかが追えなくなります。見える場所から外して、保管する場所に移します。
| 置き場所 | 入れるもの | 誰が見るか |
|---|---|---|
| 現場の掲示、共有の教材フォルダ | 最新版だけ | 作業者、新人 |
| 旧版の保管場所 | 過去の版 | 改訂の経緯を追う人、監査 |
| 作成中のフォルダ | 未承認の草案 | 作成者だけ |
現場の紙は、回収して差し替える
共有フォルダを直しても、現場に貼ってある紙は古いままです。改訂したら、貼ってある紙を回収するところまでを1件にします。回収した紙は、その場で処分します。
個人が持っているコピーを、増やさない
各自がコピーを持つと、改訂しても手元の紙は古いままです。コピーを配らず、1か所を見に行く形にできると、版の混在が起きません。難しい場合は、配った先を記録しておきます。
草案を、共有フォルダに置かない
作りかけの教材が最新版と同じ場所にあると、間違って使われます。承認されるまでは別の場所に置くと決めておきます。
動画と紙は、役割で使い分ける
動画のほうが分かりやすい場面と、紙のほうが速い場面があります。作業の性質で選ぶと、どちらも活きます。
| 動画が向く | 紙が向く | |
|---|---|---|
| 内容 | 手や体の動き、力の入れ方、音や振動 | 数値、判定基準、チェック項目 |
| 使う場面 | 初めて教えるとき | 作業中に確認するとき |
| 作る手間 | 撮影と編集。改訂が重い | 作りやすい。改訂も軽い |
| 現場での使いやすさ | 端末が要る。音が聞こえない場所がある | すぐ見られる。汚れる |
動画は短く切る
1本20分の動画は、必要な場面を探すのに時間がかかります。手順ごとに1分から3分で切ると、その場で見返せます。改訂するときも、直す1本だけを撮り直せます。
動画にも版を付ける
動画は上書きされやすく、いつのものか分からなくなりがちです。ファイル名か冒頭に、版と撮影日を入れると判断できます。
両方作る必要はない
すべての作業に動画と紙をそろえると、改訂の手間が2倍になります。動きが大事な作業だけ動画にすると決めておくと、続けられます。
教材を直す材料は、質問と指導記録から拾う
教材の改訂は、思い付きではなく事実から始めます。同じ質問が繰り返し出ている場所が、直すべき場所です。
3回出た質問は、教材の穴
1回なら本人の聞き逃しですが、3人が同じことを聞いたら、書かれていないか、分かりにくいかのどちらかです。質問を集めておくと、この判断ができます。
指導記録を横に読む
1人ぶんを縦に読むと本人の課題に見えますが、複数人ぶんを横に読むと、同じ手順で止まっていることに気づけます。読み方は指導記録の書き方で扱っています。
直したら、質問の記録に印を付ける
教材を直したのに、同じ質問がまだ出るなら、直し方が足りていません。どの質問に対して直したかを残すと、効いたかどうかが分かります。
教材の担当を、作業ごとに決める
教材の管理が止まる原因の多くは、持ち主が決まっていないことです。作業ごとに1人、教材の担当を置きます。
| 担当がやること | 頻度 |
|---|---|
| 手順が変わったときに教材を直す | その都度 |
| 質問や指導記録から、直す場所を拾う | 月1回 |
| 一覧の置き場所と版を最新にする | 直したとき |
| 使われていない教材を整理する | 年1回 |
担当は、その作業をよく知る人にする
教材の担当を事務側に集めると、内容の正しさを判断できません。作業をよく知る人が担当し、事務側は一覧と周知を見るという分け方が回りやすくなります。
担当が代わるときは、一覧を渡す
異動や退職で担当が代わると、教材の場所が分からなくなります。一覧そのものが引継ぎの資料になります。個別に説明する必要がありません。
使われていない教材は、外す
作ったが誰も使っていない教材が並んでいると、一覧が読みにくくなります。年1回、1年間参照されなかったものを保管場所へ移すと、一覧が軽く保てます。
教材が無い作業も、一覧に載せる
行だけ作って置き場所を空欄にしておくと、教材が無い作業がどれかが見えます。次に作るものが決まります。
教材の管理が止まるときの直し方
一覧を作ったのに更新されなくなる。よくある流れです。
| 症状 | よくある原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 一覧が古くなる | 担当が決まっていない | 作業ごとに担当を1人置く |
| 最新版が2つある | 版の付け方が決まっていない | 番号と日付をファイル名に入れる |
| 現場は古い紙のまま | 回収していない | 改訂に回収まで含める |
| 動画がどこにあるか分からない | 個人の端末に入っている | 置き場所を一覧に書く |
| 誰も一覧を見ない | 探すより聞くほうが早い | 新人に一覧から探させる場面を作る |
探すより聞くほうが早い状態を直す
一覧を見るより先輩に聞くほうが速いなら、一覧は使われません。一覧を1画面に収める、作業名で探せるようにすると、見に行く価値が出ます。
教材を直したら、再教育が要るかを判断する
手順が変わった場合、教材を直すだけでは足りません。すでに覚えた人に教え直す必要があるかを、改訂のときに判断します。判断した結果も履歴に残します。
完璧な教材を目指さない
きれいな教材を作ろうとすると、着手できません。手書きの図に写真を貼ったものでも、最新であれば十分に役に立ちます。版が分かることのほうが、見た目より大事です。
資料に他人の著作物を使うときの考え方は社内研修と著作権にまとめています。
教材の管理にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
社内の教材の管理のしかたを決めた法令はありません。教材の管理に関係してくるのは、教材に入れる文章や画像の著作権と、品質の規格の動きです。確かめられたものを日付順に並べます。
| 時期 | 出来事 | 教材の管理への影響 |
|---|---|---|
| 2024年3月15日 | 文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について」が公表された。生成AIで作った文章や画像も、既存の著作物と似ていて、それをもとに作られたものであれば、通常の著作物と同じように侵害かどうかを判断するという考え方が示された(考え方そのものに法的な拘束力はない) | 生成AIで作った図や説明文を教材に入れるときも、出どころと作った日を一覧に残しておくと、あとで確かめられる |
| 2026年4月 | 未管理著作物裁定制度の運用が始まった。利用の可否について権利者の意思が確認できない公表された著作物を、文化庁長官の裁定を受け、通常の使用料に相当する補償金を払って利用できる | 権利者に連絡がつかない資料を教材に使いたいときの道が1つ増えた。ただし手続きと補償金が要る |
| 2026年9月16日 | 品質マネジメントシステムの規格 ISO 9001:2026 が発行された。2015年版からの移行期限は2029年9月30日とされている | 認証を受けている会社は、手順書や教材を「文書化した情報」として管理している。移行の準備にあわせて、版の付け方と旧版の置き場所を見直す機会になる |
教材の管理で、ポイントはここです。一覧に「出どころ」の列を1つ足しておくと、著作権の確認が要る教材がどれかをあとから拾えます。自社で作ったもの、社外の本や記事から取ったもの、生成AIで作ったもの、の3つに分けるだけで足ります。
出典:AIと著作権(文化庁)、未管理著作物裁定制度(文化庁)、ISO 9001:2026(ISO)
確認日は2026年10月3日です。著作物の使い方は文化庁の著作権に関する相談窓口に、規格の移行は認証機関にご確認ください。
教材の管理に出てくる用語
教材の管理では、現場の呼び名と、規格や法令の言葉が混ざります。よく出てくるものを並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 版(版数) | 教材を直した回数を示す番号。何を版に数えるかは会社が決める | 法令上の定義はない |
| 改訂履歴 | いつ、何を、なぜ直したかの記録 | 法令上の定義はない |
| 文書化した情報 | 品質マネジメントシステムで、管理し維持することが求められる情報。手順書や教材もここに入ることが多い | ISO 9001 |
| 著作物 | 思想または感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの | 著作権法 第2条第1項第1号 |
| 職務著作 | 会社の発意で、社員が職務上作り、会社の名義で公表するものは、契約や就業規則に別段の定めがない限り、会社が著作者になる | 著作権法 第15条 |
| 引用 | 公表された著作物を、公正な慣行に合い、目的上正当な範囲で使うこと。条件を満たせば許諾は要らない | 著作権法 第32条 |
| 教育機関での複製(35条) | 営利を目的としない学校などの授業で、必要な限度で著作物を複製できる例外。企業や団体の研修施設は該当しない | 著作権法 第35条、改正著作権法第35条運用指針 |
教材の管理で取り違えやすいのは、「教材だから自由にコピーしてよい」という学校の感覚です。学校の例外(第35条)は、会社の社内研修には使えません。講師から受け取った資料の扱いは外部講師の手配でも触れています。
教材の管理と一緒に押さえておきたいこと
教材の管理を調べると、管理システムやアプリの紹介が多く出てきます。道具を選ぶ前に決めておきたいことを3つ挙げます。
社員が作った教材の著作者は、通常は会社になる
会社の指示で社員が仕事として作り、会社の名義で出す教材は、契約や就業規則に別段の定めがない限り、会社が著作者になると定められています(著作権法第15条)。社内だけで使う教材も、会社の名義で出すものとして作っていれば同じに扱われると一般に解されています。教材の表紙か一覧に、作った部署と会社名を入れておくと、作った人が異動や退職をしても、直して使い続けることに迷いません。
他人の本や記事を教材に入れるときは、許諾か引用で
学校の授業では、必要な限度で著作物をコピーできる例外がありますが、営利を目的として設置された機関は除かれていて(著作権法第35条)、運用指針でも企業や団体の研修施設は該当しないとされています。社外の本や記事、写真を教材に入れるときは、権利者の許諾を取るか、出どころを示して引用の範囲にとどめる(同法第32条)のが基本です。引用は、自分の説明が主で、引用部分がはっきり分かれていることが前提になります。迷うものは、一覧の「出どころ」の列に印を付けて、あとでまとめて確かめます。
教材の管理にシステムやアプリが要るかは、一覧で困ってから決める
教材の管理のシステムやアプリは、動画の配信や閲覧の記録まで1か所でできるのが利点です。ただ、一覧の5列と版の付け方が決まっていないまま入れると、散らばる場所が1つ増えるだけになります。まず表計算ソフトの一覧で回し、行が増えて探しにくくなった、拠点が増えて共有が回らない、といった困りごとが出てから選ぶと、何に使う道具かがはっきりします。ISO 9001の認証を受けている会社なら、文書化した情報の管理として、版の管理を含む変更の管理などが求められています。
出典:著作権法(e-Gov法令検索)、改正著作権法第35条運用指針(授業目的公衆送信補償金等管理協会)
よくある質問
- Q. 教材を1か所に集めることから始めるべきですか?
- 先に一覧を作ることをおすすめします。集める作業は数週間かかり、途中で止まると2か所に分かれた状態が残ります。教材名、対象の作業、置き場所、版と改訂日、担当者を書いた一覧なら半日で作れて、その日から迷わずに探せるようになります。
- Q. 版はどのように付ければよいですか?
- 版の番号と改訂日をセットで書いてください。「最新版」「修正版」といった書き方だと、同じ名前のファイルが2つ並んだときに判断できません。ファイル名の末尾に「第3版 2026-08-30」のように入れておくと、開かなくても分かります。
- Q. 古い版の教材は削除してよいですか?
- 削除せず、見える場所から外して保管場所へ移すことをおすすめします。削除すると、なぜその手順に変えたのかを後から追えなくなります。現場に貼ってある紙は改訂のときに回収し、共有フォルダには最新版だけを置く形にします。
- Q. 動画と紙の手順書は、両方作るべきですか?
- すべての作業で両方そろえると、改訂の手間が2倍になります。手や体の動き、力の入れ方、音や振動が大事な作業は動画、数値や判定基準やチェック項目は紙、という使い分けをおすすめします。動画は1本1分から3分に切ると、探しやすく改訂も軽くなります。
- Q. 教材はどのタイミングで直せばよいですか?
- 同じ質問が3回出た場所、複数人が同じ手順で止まっている場所を直してください。新人からの質問記録と指導記録を横に読むと、直すべき場所が事実として出てきます。全面改訂ではなく1か所ずつ直すほうが、周知も軽くて済みます。
- Q. 教材の担当は誰にするのがよいですか?
- その作業をよく知る人を作業ごとに1人決めることをおすすめします。事務側に集めると、内容の正しさを判断できません。事務側は一覧の維持と周知の確認を担い、内容は現場の担当が持つという分け方が回りやすくなります。
- Q. 教材はきれいに作り直したほうがよいですか?
- きれいさより、最新であることと版が分かることのほうが大事です。見栄えの良い教材を作ろうとすると着手できず、結果として古い教材が現場に残り続けます。手書きの図に写真を貼ったものでも、版と改訂日が入っていて内容が現状と合っていれば十分に役に立ちます。まず一覧を作り、内容の更新を優先してください。
- Q. 社外の本や記事を、社内研修の教材にコピーしてよいですか?
- 学校の授業でコピーできる例外(著作権法第35条)は、営利を目的として設置された機関を除いており、企業や団体の研修施設には当てはまりません。社内研修の教材に使うときは、権利者の許諾を取るか、出どころを示して引用の範囲(同法第32条)にとどめてください。迷うものは、教材の一覧に出どころの列を設けて印を付けておくと、あとでまとめて確かめられます。
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