教える記録

社内講師の育成|教える側の負担を見える形にする

公開 2026-08-30 執筆 育成板 編集部

社内で研修をやろうという話になり、詳しい人に講師を頼む。引き受けた人は、通常業務の合間に資料を作り、当日を迎える。準備にかかった時間は、どこにも残りません。

一般には、社内講師とは、社員が講師役となって社内の研修を行うことを指します。外部に頼むより費用が抑えられ、自社の実物で教えられる利点があります。続かなくなる理由はほぼ1つで、教える側の負担が見えず、頼まれた人が損をする形になっていることです。この記事では、社内講師の育成を、人選、準備、記録、評価の順に整理します。

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この記事の内容(8項目)

社内講師には、外部に無い強みがある

費用が安いことだけが理由だと、頼まれる側は納得しません。社内講師でなければできないことを先に押さえます。

社内講師外部講師
教えられること自社の設備・製品・手順そのもの一般的な考え方、他社の事例
質問への答え「うちの場合は」に答えられる一般論までになりやすい
研修のあと職場で続けて見てもらえる当日で終わる
費用人件費のみ謝金、旅費、教材費

自社の実物で教えられる作業は、社内でやる

設備の操作、製品の検査、社内の手続きは、外部には教えられません。逆に、法令や規格の解説、他社の事例は外部のほうが早いと割り切ります。役割を分けると、どちらにも頼みやすくなります。

教える側の理解も深まる

人に説明すると、自分の理解の穴が見えます。社内講師は、講師本人にとっての育成にもなります。次の指導者を育てる場としても使えます。

外部に頼むときは、記録の形をそろえる

社内と外部で記録の形が違うと、年間の実績を集計できません。どちらも同じ研修管理表に落とすと、比較ができます。外部の手配は別の表で追います。

講師は、いちばん詳しい人でなくてよい

その分野でいちばん詳しい人が、いちばん教えるのが上手とは限りません。詳しすぎる人は、初めて聞く人が何につまずくかを忘れています。

詳しさで選ぶ

20年やっているベテラン

知識は確かだが、
説明が細かくなりすぎる。
受講者が付いてこられない。

近さで選ぶ

2、3年前に覚えた人

つまずいた場所を覚えている。
説明が受講者の目線に近い。
ベテランは監修に回る。

ベテランと若手を組ませる

内容の正しさはベテランが見て、説明は若手が行う。2人1組にすると、どちらの弱点も補えます。若手にとっては、教える側の練習にもなります。

頼む前に、断れる形にする

断りにくい形で頼むと、引き受けたあとの準備が雑になります。何時間くらいかかるか、業務としてどう扱うかを先に示してから頼むと、返事が正直になります。

1人に集中させない

話がうまい人に毎回頼むと、その人の負担だけが増えます。年間で誰が何回やったかを数えておくと、偏りに気づけます。

準備の時間を、先に見積もって業務にする

社内講師がいちばん消耗するのは、当日ではなく準備です。準備にかかる時間を先に見積もり、業務時間として確保します。

研修の形準備の目安内訳
30分の朝礼教育1から2時間要点の整理、配る紙1枚
2時間の座学1日程度資料作り、進め方の組み立て
半日の実技2日程度材料の準備、練習用の設備確保
2回目以降(同じ内容)1時間から半日前回の資料の手直しのみ

2回目からは、大きく減る

資料が残っていれば、2回目以降の準備は大幅に軽くなります。1回目の負担を業務として認めておくことが、続く条件になります。資料を個人の手元に残さず、教材の一覧に載せます。

実際にかかった時間を記録する

見積りと実績がずれていても、記録がなければ直せません。実際にかかった準備時間を残すと、次に頼むときの見積りが正確になります。

資料は、使い回せる形にする

その回限りの資料を作ると、毎回ゼロから作ることになります。手順書や既存の教材を土台にして、足りない部分だけを作ると、準備が軽くなり、内容も現場と合います。

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実施した記録を残して、実績にする

社内講師は、記録が残らないと「やって当たり前」になります。誰が、何を、何人に、どれだけの時間で教えたかを残します。

1回ぶんに残すもの
実施日、内容、受講者
手間準備時間、当日の時間
反応アンケートの結果
次回直すところ
手間の欄が抜けると、社内講師は「無料」に見える。ここが記録の要

年間の実績として集計する

1回ずつでは小さく見えても、年間で数えると相当な時間になります。集計しておくと、講師役の評価や、外部委託との比較に使えます。同じ内容を外部に頼んだ場合の費用と並べると、社内でやっている価値も見えます。

受講者の反応も残す

アンケートの結果を講師本人に返さないと、次に何を直せばよいか分かりません。点数だけでなく、自由記述をそのまま渡すと改善につながります。効果の見方は研修の効果測定で扱っています。

受講の記録は、研修管理表に落とす

社内研修も、誰が受けたかを追う必要があります。実施の記録は講師側、受講の記録は人ごとの一覧と分けます。運用は研修管理の方法にまとめています。

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教える技術は、3つだけ伝えれば足りる

講師養成の講座に出さなくても、要点を3つ伝えるだけで、社内研修の質はかなり上がります。

伝えること具体的にどうするか効き方
先に全体像を見せる「今日は3つ話します」と最初に言う受講者が迷子にならない
やらせてみる説明のあと、その場で1回やらせる分かったつもりが減る
質問の時間を最後に置かない区切りごとに「ここまでで」と聞く最後だと誰も手を挙げない

説明の順番は、手順書のとおりでよい

研修用に順番を組み直すと、現場に戻ったときに手順書と合いません。手順書と同じ順番で教えるほうが、あとで自分で確認できます。

時間を守る

予定を超えると、受講者は次の作業が気になって聞いていません。内容を減らしてでも時間内に終えるほうが、残るものは多くなります。入り切らない分は次回に回します。

1回で全部を教えようとしない

1回の研修で伝わるのは、多くて3点です。要点を3つに絞って、それを繰り返すほうが定着します。詰め込むほど、何も残りません。

社内講師が続かなくなるときの直し方

1年やってみて立ち消えになる。よくある流れです。

症状よくある原因直し方
頼んでも断られる準備が業務として扱われていない準備時間を見積もって業務に入れる
同じ人ばかりやっている実施回数を数えていない年間の実績を集計して割り振る
内容が毎回ゼロから資料が個人の手元にある教材の一覧に載せて共有する
受講者の評判が悪い反応が講師に返っていないアンケートを本人に渡す
やって当たり前になっている手間が記録されていない準備時間まで記録に残す

手当を出すかは、あとの話

金銭的な手当より、まず準備を業務時間として認めることのほうが効きます。手当があっても、通常業務が減らなければ負担は変わりません。

やめる判断も持つ

受講者に必要とされていない研修を、講師の努力で続けても意味がありません。年に1回、続けるかどうかを内容ごとに判断します。やめれば、講師の時間が空きます。

外部に切り替える判断もある

社内で教えるのが難しい内容を無理に抱えると、質が下がります。法令や規格の解説など、外部のほうが早いものは頼むと決めておくと、社内講師の負担が減ります。

社内講師を、次の指導者につなげる

講師を経験した人は、日常の指導でも教え方が変わります。研修の場だけで終わらせず、育成の役割につなげます。

段階やること次につながること
1回目ベテランと組んで、説明の部分を担当教えることに慣れる
2、3回目同じ内容を1人で担当資料と進め方が固まる
その後OJTの指導者を担当日常の育成が回るようになる

教えられる人の数を、数えておく

スキルマップで、教えられる段階に達している人が何人いるかを見ます。この人数がゼロの作業は、育成が止まる作業です。増やす対象になります。

指導者の割り当てに使う

社内講師の実績は、OJTの指導者を誰にするかの材料になります。教えた経験がある人を優先して割り当てると、指導の質が安定します。割り当て方はOJT計画の作り方で扱っています。

本人の評価にも反映する

教えることを引き受けた事実が、どこにも反映されないと続きません。年間の実績を、評価や面談の材料として使うと、引き受ける理由ができます。

よくある質問

Q. 社内講師には、その分野でいちばん詳しい人を選ぶべきですか?
必ずしもそうではありません。詳しすぎる人は、初めて聞く人が何につまずくかを忘れていることがあります。2、3年前に覚えた人のほうが、つまずく場所を覚えているぶん説明が届きやすくなります。内容の正しさはベテランが監修する形にすると、両方の強みが活きます。
Q. 社内研修の準備には、どのくらい時間を見ておけばよいですか?
30分の朝礼教育で1から2時間、2時間の座学で1日程度、半日の実技で2日程度が目安です。同じ内容の2回目以降は、資料が残っていれば1時間から半日まで下がります。この時間を業務として確保することが、社内講師が続く条件になります。
Q. 社内講師に手当を出すべきですか?
手当より先に、準備を業務時間として認めることをおすすめします。手当があっても通常業務が減らなければ、負担は変わりません。まず準備時間を見積もって業務に入れ、実際にかかった時間を記録に残すところから始めてください。
Q. 社内講師と外部講師は、どう使い分けますか?
自社の設備、製品、手順そのものを教える内容は社内講師のほうが向いています。法令や規格の解説、他社の事例といった一般的な内容は外部のほうが早く確実です。役割を分けておくと、どちらにも頼みやすくなります。
Q. 教える技術を身につけるには、講師養成の研修が必要ですか?
必須ではありません。最初に全体像を見せる、説明のあとにその場でやらせてみる、質問の時間を最後にまとめず区切りごとに置く。この3点を伝えるだけでも、社内研修の質はかなり上がります。
Q. 社内講師の実績は、どう記録すればよいですか?
実施日、内容、受講者に加えて、準備にかかった時間と当日の時間まで残してください。手間の欄が抜けると、社内講師が無料の労力に見えてしまいます。年間で集計すると相当な時間になり、評価の材料や外部委託との比較にも使えます。
Q. 社内研修の内容は、どのくらいの量にすべきですか?
1回で伝わるのは、多くて3点です。要点を3つに絞って繰り返すほうが定着します。時間を超えると受講者は次の作業が気になって聞いていないため、内容を減らしてでも時間内に終えてください。入り切らない分は次回に回すほうが、結果として残るものは多くなります。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。