評価と面談

自己申告制度の運用|出させたら必ず返す

公開 2026-08-30 執筆 育成板 編集部

年に1回、自己申告書を全員に書いてもらっている。集めて人事のファイルに綴じて、それきり。2年目から白紙が増え、3年目には「毎年出しているけど何も変わらない」と言われる。返していないことが原因です。

一般には、自己申告制度とは、本人の希望や状況を定期的に申告してもらう仕組みを指します。制度そのものは簡単ですが、回答を返すところまでを設計しないと、2年で形骸化します。この記事では、自己申告制度の運用を、聞く項目、扱いの範囲、返し方の順に整理します。

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この記事の内容(8項目)

聞く項目は、5つまでに絞る

項目が多いと書くのが負担になり、内容も薄くなります。会社が実際に使う項目だけを聞きます。

聞くこと何に使うか必須か
いまの担当を続けたいか配置の判断必須
やってみたい作業・職種育成の計画、多能工化必須
取りたい資格資格取得支援の対象必須
異動の希望人員の計画会社の規模による
働き方についての事情勤務時間、勤務地の配慮任意

使わない項目は、聞かない

集めても使わない項目があると、「聞いても何も起きない」という印象が全体に広がります。使う予定の無い項目は、思い切って外します。

自由記述を1つ入れる

選択式だけだと、想定していなかった話が拾えません。「その他、伝えておきたいこと」を1つ置くと、大事な話がここに書かれることがあります。

働き方の事情は、任意にする

家庭の事情や健康に関することは、書きたくない人に書かせない形にします。任意であることを明示し、書かれた場合の扱いも先に決めておきます。

扱いの範囲を、先に伝える

誰が読むのか分からないまま書かせると、当たり障りのないことしか書かれません。読む人と使い道を明示します。

決めること伝え方の例
誰が読むか人事担当と、部門長まで
直属の上司が読むか読む/読まないを明示する
何に使うか配置と育成の検討。評価には使わない
保管の期間社内の規程に従う

直属の上司が読むかどうかを、はっきりさせる

ここがあいまいだと、上司に関する話が書けません。読む場合は「上司も読みます」と明示するほうが、誤解が起きません。読まない運用にするなら、その保管方法も決めます。

評価には使わないと、明言する

異動を希望したことが評価に響くと思われると、誰も書きません。評価とは切り離すと明言するだけで、内容が変わります。

健康に関する情報の扱いを決めておく

働き方の事情として体調に関することが書かれる場合があります。配慮が必要な個人情報として、閲覧の範囲と保管を分けて扱います。迷う場合は人事の判断に従います。

出させたら、必ず返す

この制度の成否は、ほぼここで決まります。返さない年が1回あると、翌年から白紙が増えます。

返すまでの流れ
1. 提出全員から集める
2. 確認面談で内容を聞く
3. 検討会社として判断する
4. 回答全員に、結果と理由を返す
4が抜けると、次の年から書かれなくなる。叶わない場合ほど、理由を返す

叶わない場合ほど、理由を返す

希望が通った人には自然と伝わりますが、通らなかった人に何も返さないのがいちばん問題です。「今期は難しい」「こういう条件が整えば検討できる」と返します。

返す時期を、先に決めておく

「検討中」のまま1年が過ぎることがあります。提出から2か月以内に返す、と決めておくと、滞りません。

返し方は、面談でも書面でもよい

全員と面談する時間が取れないなら、書面で返す形でも構いません。大事なのは、何らかの回答が本人に届くことです。

次の年に、前回の回答から始める

前回の申告と回答を手元に置いて面談すると、話が続きものになります。状況が変わったかどうかも確認できます。

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希望を、育成と配置につなげる

集めただけで終わらせないために、使う先を決めておきます。3つにつなげると、制度が回り始めます。

申告の内容つなぐ先いつ
やってみたい作業育成計画、多能工化の対象次の期の計画づくり
取りたい資格資格取得支援の対象、教育計画年間教育計画を作るとき
異動の希望人員の計画、次の配置異動を検討するとき
いまの担当を続けたくない作業の割り当ての見直しすぐ

会社の必要と重なるところを探す

本人の希望と、組織として足りていないところが重なれば、いちばん進みます。スキルマップの穴と、申告の内容を並べて見ると、重なりが見つかります。

1つでも実現すると、次から書かれる

制度が信用されるのは、実際に何かが変わったときです。小さくてもよいので、申告をきっかけに1件は動かします。

次の職位を目指す人には、要件を示す

上を目指したいという申告があったら、何を満たせば上がれるのかを見せます。示さないまま「頑張って」と言うだけだと、何をすればよいか分かりません。要件の作り方は職位要件の決め方にまとめています。

職位要件 充足確認表(Excel・無料)次の職位に上がるための要件を、項目ごとに満たしているか見ます。登録不要でダウンロードできます。
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年1回だけにしない

年1回の申告だけだと、その時期に思ったことしか拾えません。普段の面談と組み合わせます。

自己申告1on1
頻度年1回月1回
形式書面。記録として残る会話。要点だけ記録
届く先人事、部門長直属の上司まで
扱い会社として検討する現場で対応できることが中心

1on1で出た話を、申告につなげる

普段の面談で「他の工程もやってみたい」という話が出たら、次の自己申告で正式に書いてもらうと、会社として検討できる形になります。

急ぐ話は、年1回を待たない

働き方の事情や、いまの担当が続けられないといった話は、年1回を待てません。随時受け付ける窓口も用意しておきます。

1on1の記録には、書きすぎない

異動の希望のような正式な話を1on1の記録にだけ書くと、人事に届きません。正式なものは申告の様式で受けると、扱いが分かれます。進め方は1on1の進め方で扱っています。

書きやすい様式にする

白紙が多いときは、内容ではなく様式に原因があることがあります。

書きにくい形書きやすい形
自由記述だけの用紙選択式を中心にして、自由記述は1つ
抽象的な設問(キャリアビジョン)具体的な設問(やってみたい作業)
A4で2枚以上1枚に収める
提出先が上司だけ人事に直接出す選択肢も用意する

選択式を中心にする

「キャリアビジョンを記入してください」と書かれると、多くの人は手が止まります。選択肢から選ぶ形にして、補足を自由記述にすると集まります。

1枚に収める

枚数が増えると、後回しにされます。A4で1枚に収まる量にしておくと、10分で書けます。

提出の方法に、選択肢を用意する

上司を経由する形だと、上司に関する話が書けません。人事へ直接出せる方法も用意すると、書ける内容が広がります。

書く時間を、業務中に取る

持ち帰って書かせると、後回しになり白紙が増えます。業務時間内に10分を確保すると、提出率が上がります。

自己申告制度が形骸化するときの直し方

集めているのに機能していない。原因はほぼ決まっています。

症状よくある原因直し方
白紙や「特になし」が多い返していない。設問が抽象的回答を返す。設問を具体的にする
毎年同じ内容が出てくる前年の申告に対応していない前回の回答から面談を始める
本音が書かれない誰が読むか分からない読む範囲と使い道を明示する
集めただけで終わる使う先が決まっていない育成計画と教育計画につなげる
提出率が低い持ち帰りで書かせている業務時間内に書く時間を取る

まず、返すことから始める

制度をいろいろ直す前に、前年ぶんの申告に回答を返すところから始めてください。それだけで、翌年の提出内容が変わります。

やめる判断もある

返す体制が作れないまま集め続けると、不信だけが溜まります。回せないなら、いったんやめて1on1に寄せるという判断もあります。

小さく始めて、続ける

全社で完璧な制度を作ろうとすると、着手できません。1つの部署で、5項目1枚から始めると、回るかどうかがすぐ分かります。

実際に動いた事例を、共有する

個人が特定されない形で、「申告をきっかけに配置が変わった」といった事例を伝えると、制度が信用されます。

よくある質問

Q. 自己申告書では、何を聞けばよいですか?
5項目までに絞ってください。いまの担当を続けたいか、やってみたい作業や職種、取りたい資格の3つは使い道がはっきりしています。会社の規模によっては異動の希望も加えます。働き方についての事情は任意にしてください。集めても使わない項目があると、聞いても何も起きないという印象が広がります。
Q. 集めた申告に、必ず回答を返す必要がありますか?
この制度の成否は、ほぼここで決まります。返さない年が1回あると、翌年から白紙が増えます。とくに、希望が通らなかった人に何も返さないのがいちばん問題です。「今期は難しい」「こういう条件が整えば検討できる」と理由を添えて返してください。提出から2か月以内、と時期を決めておくと滞りません。
Q. 直属の上司が内容を読むかどうかは、伝えるべきですか?
はっきりさせてください。あいまいだと、上司に関する話が書けません。読む場合は「上司も読みます」と明示するほうが、誤解が起きません。読まない運用にするなら、人事へ直接出せる方法と保管の仕方も決めてください。
Q. 異動を希望したことが、評価に響かないか心配されます。
評価とは切り離すと明言してください。それだけで書かれる内容が変わります。あわせて、誰が読むか、何に使うかを様式に書いておくと、本人が判断できます。
Q. 白紙や「特になし」が多くて困っています。
返していないか、設問が抽象的かのどちらかであることが多くあります。「キャリアビジョンを記入してください」ではなく「やってみたい作業」と具体的に聞き、選択式を中心にしてください。あわせて、A4で1枚に収め、業務時間内に10分の記入時間を取ると提出率が上がります。
Q. 自己申告と1on1は、どう使い分けますか?
自己申告は年1回の書面で、人事や部門長まで届き、会社として検討するものです。1on1は月1回の会話で、直属の上司が現場で対応できることが中心になります。1on1で出た話を次の自己申告で正式に書いてもらうと、会社として検討できる形になります。異動の希望を1on1の記録にだけ書くと、人事に届きません。
Q. 集めるだけで何も変わっていません。どこから直しますか?
まず、前年ぶんの申告に回答を返すところから始めてください。それだけで翌年の提出内容が変わります。あわせて、やってみたい作業は育成計画へ、取りたい資格は年間教育計画と取得支援へ、というように使う先を決めてください。小さくてもよいので、申告をきっかけに1件は実際に動かすと、制度が信用されます。返す体制が作れないなら、いったんやめて1on1に寄せる判断もあります。
自己申告・異動希望 記録表(Excel・無料)本人が出した希望と、それに対する会社の回答を残します。登録不要でダウンロードできます。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。