非エンジニアでもFDEになれる|現場の担当者を社内FDEに育てる3か月
非エンジニアでもFDEになれるのか。生成AIを業務に入れたい会社の経営者や、現場の担当者からよく出る疑問です。FDEはフォワードデプロイドエンジニアの略で、名前に「エンジニア」と入っているため、プログラミングができる人の仕事だと思われがちです。
一般には、FDEはエンジニアの中から育てるものと考えられてきました。ただ、社内の業務にAIを入れる「社内FDE」なら、業務を一番よく知っている現場の担当者が、強い候補になります。
この記事では、プログラミングの経験がない現場の担当者を、3か月で社内FDEの入り口に立たせる進め方を、月ごとに整理します。外部の研修や伴走の選び方と、助成金の考え方も紹介します。
この記事の内容(10項目)
非エンジニアでもFDEになれるのか
非エンジニアのFDEは、社内の業務を対象にする形なら、十分に目指せます。FDEは、顧客や利用部門の現場に入り込み、AIなどの仕組みを本番で使われるところまで受け持つ人を指します。
実際に、非エンジニアを対象にしたFDEの育成サービスも出ています。たとえば株式会社Uravationの「社内FDE育成プログラム」があります。対象は社内でFDEを担う候補の社員で、非エンジニアでも受けられ、1名から申し込めると案内しています。株式会社divの「テックキャンプ FDE」も、紹介サイトのAISmileyで、非エンジニアもエンジニアも受講できると紹介されています。
書籍でも同じ流れが見られます。平尾俊貴氏の書籍(株式会社dToshが2026年5月に発表)も、その1つです。FDEに必要な5つの力に加えて、非エンジニアからの転身の道筋を扱っています。社内の人材をFDEとして育て、AIの活用を内製化する方法にも触れています。
ポイントはここです。非エンジニアがFDEになるときの出発点は、技術ではなく業務です。自分の業務の手間を数字で言えることが、最初の一歩になります。
非エンジニアのFDEが持っている強み
非エンジニアのFDEには、エンジニアの出身者には無い強みがあります。それは、業務の中身と、そこで働く人を知っていることです。
研修会社のインソースは、FDEに要る力として3つの人間力を挙げています。課題を話してもらえる状態をつくる「信頼構築力」、技術の話を仕事の話に変える「翻訳力」、現場で使えるまで遂行する「実装・推進力」です。
| インソースが挙げる力 | 現場の担当者がすでに持っていること |
|---|---|
| 信頼構築力 | 同じ部署の人から、困りごとを気軽に話してもらえる |
| 翻訳力 | 業務の言葉で話せる。どこが手間かを、作業の手順で説明できる |
| 実装・推進力 | 作る力はこれから。現場で使い続けてもらう工夫は、普段から行っている |
表のとおり、3つのうち2つは、現場で何年か働いた人なら下地があります。足りないのは主に「作る」ところで、これは3か月の中で小さく経験させていけます。
反対に、エンジニアの出身者は作る力が先にあり、業務の聞き取りや、現場の人に話してもらえる関係づくりをあとから身につけます。足りないものが逆なので、育て方も逆の順になります。
非エンジニアがFDEになるときに足りないもの
非エンジニアがFDEになるときに足りないものは、大きく3つあります。先に分かっていれば、3か月の計画の中でそれぞれに時間を取れます。
1つ目は、作る力です。生成AIのチャット画面や表計算ソフトの機能を組み合わせて、手作業の一部を自動にするところから始めます。最初から本格的なプログラムを書く必要はありません。
2つ目は、止まったときの直し方です。作った仕組みは、いつか止まります。止まったときに手作業へ戻す手順を自分で書けることが、現場で任されるための条件になります。作る力より、この「戻せる」ことのほうが信頼につながります。
3つ目は、情報の扱いです。業務の情報を生成AIに入れるときは、どこまで入れてよいかを社内の決まりで確かめる必要があります。個人情報や取引先の情報が入る業務は、決まりができてから手を付けます。
この3つは、エンジニアのFDEにとっても大事なことです。非エンジニアだから特別に足りない、というものではありません。順番に経験させれば身につきます。
自分にどの力が足りないかは、FDEに必要なスキルを4つの領域(実装・データとAI・業務の理解・顧客との推進)に分けて点を付けると見えてきます。非エンジニアの場合、業務の理解の点が高く、実装の点が低い形になるのが普通です。低い点は、育てる順番の目印として使います。
非エンジニアを社内FDEに育てる3か月の全体像
非エンジニアを社内FDEに育てる3か月は、月ごとに1つずつ目標を置くと進めやすくなります。1か月目に業務を洗い出し、2か月目に1つ作り、3か月目に使われているかを測ります。
| 月 | 本人がすること | 終わったと言える状態 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 自分の業務を書き出し、回数と時間を1週間記録して、手を付ける順を決める | 最初に作る業務が1つ決まり、入れる前の時間が記録されている |
| 2か月目 | 選んだ業務の一部を、生成AIや表計算の機能で自動にして、自分で使う | 自分の業務で2週間使い、止まったときの戻し方を書いている |
| 3か月目 | 同じ課の人にも使ってもらい、使われているかと減った時間を測る | 減った時間を数字で上司に報告し、次に手を付ける業務を決めている |
3か月という長さには理由があります。外部の育成サービスでも、3か月を1つの区切りにしているものが目立ちます。Uravationの社内FDE育成プログラムは、標準期間を3か月としています。テックキャンプ FDEの法人向けの育成プログラムも、3か月間の伴走つきです(どちらも2026年10月時点の公開情報)。
ポイントはここです。3か月で「一人前のFDE」になるわけではありません。3か月で目指すのは、自分の業務で1つ成果を出し、それを数字で説明できる状態です。そこから次の業務、次の部署へと広げていきます。
1か月目:非エンジニアのFDEは自分の業務の洗い出しから始める
非エンジニアのFDEの1か月目は、自分の業務を洗い出すことに使います。いきなり作り始めると、作りやすいが効果の小さい業務を選んでしまいがちです。
洗い出しでは、繰り返している業務を10〜15個書き出し、業務ごとに次の4つを並べます。
- いまのやり方(手順)
- 月の回数
- 1回にかかる時間
- 人の判断が要るか(要らない・ときどき要る・毎回要る)
回数と時間は、思い出して書かず、1週間だけ実際に記録します。思い出して書くと、長い業務ほど短く見積もりがちです。メモ用紙に正の字を付ける程度の記録で足ります。
書き出したら、月の時間(回数×1回の時間)と、人の判断の有無で、手を付ける順を決めます。判断が要らず月の時間が長い業務が最初の候補です。毎回その場で判断する業務は、人が続けるものとして外します。
育成板の「自動化したい業務の洗い出しシート」には、設備工事会社の工事事務の担当者(架空・プログラミングの経験なし)が13業務を書き出した記入例が入っています。月の時間は数式で出て、手を付ける順をA〜Dで決める線もそろえてあります。
2か月目:非エンジニアのFDEが1つ作って使ってみる
非エンジニアのFDEの2か月目は、選んだ業務の一部を実際に自動にしてみる月です。業務の全部ではなく、手順が毎回同じ部分だけを切り出します。
たとえば、現場から届く写真の整理なら、ファイルの名前を付け直す部分だけを自動にする。手書きの日報の転記なら、写真に撮った日報から数字を読み取って表に下書きする部分だけをAIに任せる。人が確かめる部分は残したままにします。
この月にもう1つ大事なのが、止まったときに手作業へ戻す手順を、自分で書いておくことです。戻し方が書いてあれば、上司も安心して任せられます。
作るときに一人で抱え込まないことも大切です。社内に情報システムの担当者がいれば、週に1回、30分ほど相談の時間をもらいます。外部の伴走にも、週1回の面談を軸にしているものがあります。Uravationのプログラムは、週1回・全12回、1回60分の個別指導です。実際の業務を題材に、画面共有で実習を行うと案内しています(2026年10月時点の公開情報)。
作ったものは、まず自分の業務で2週間使います。使ってみて手間が増えたところを直してから、ほかの人に広げます。
2か月目に作るものは、見た目が粗くてもかまいません。大事なのは、毎日の業務の中で本当に使えるかです。自分が使わないものは、ほかの人も使いません。2週間のうちに使わなかった日があれば、その日に何が面倒だったかをメモに残します。そのメモが、3か月目に人へ広げるときの直しどころの一覧になります。
3か月目:非エンジニアのFDEは使われているかを測る
非エンジニアのFDEの3か月目は、作ったものを同じ課の人にも使ってもらい、成果を数字で確かめる月です。FDEの仕事は、作った日ではなく、使われ続けている状態になった日に一区切りがつきます。
測るのは、1か月目に記録した「入れる前の時間」と同じ測り方での1回の時間です。測り方を変えると、前と後を比べられなくなります。
あわせて、毎日使っている人の数を数えます。使っていない人がいたら、仕組みの説明をする前に、その人の作業を横で見て、どこで手が止まるかを聞きます。使われない理由は、たいてい仕組みの外の、小さな手間にあります。
3か月の終わりには、減った時間と使っている人の数を、上司に1枚で報告します。報告の最後に、次に手を付ける業務を1つ書きます。これで、次の3か月の計画につながります。
報告の形は、案件の振り返りと同じ形にそろえておくと、あとで並べて比べられます。業務の聞き取り・目標の数字・作ったもの・使われているか・持ち帰る学びの5つで振り返る形は、FDEとコンサルの違いの記事の後半で紹介しています。
非エンジニア向けのFDE研修・伴走の選び方
非エンジニアのFDEを外部の力を借りて育てる場合、研修と伴走のどちらを中心にするかで選び方が変わります。2026年10月時点で公開されている情報から、非エンジニアも対象にしている2つを並べます。
| サービス | 形式と期間 | 主な中身 | 料金の公開 |
|---|---|---|---|
| Uravation 社内FDE育成プログラム | 1対1の個別指導(オンライン)。週1回・全12回、1回60分。標準3か月 | 業務ヒアリング、ゴール設定、自動化対象の選定、実業務を題材にした実習、セキュリティ設計 | 公開あり。モニター価格は3か月750,000円(税別)、定価は3か月900,000円(税別) |
| テックキャンプ FDE(法人向け 人材育成プログラム) | 3か月間の伴走つきeラーニング。学習時間120時間。オンライン面談 | 業務の棚卸しからAIの実装まで。自社専用の業務改善ツールを自分で作る演習 | 金額の公開なし(資料請求から問い合わせ) |
選ぶときに見たいのは、自社の実際の業務を題材にできるかです。練習用の題材だけで終わると、研修のあとに自社の業務へ置き換えるところで止まりがちです。
研修の前に、1か月目の業務の洗い出しだけは社内で済ませておくと、研修の時間を作る練習に集中できます。研修の効果の確かめ方は、研修の効果測定の考え方がそのまま使えます。
非エンジニアのFDE育成と助成金
非エンジニアのFDE育成に外部の研修を使う場合、国の助成金が使えることがあります。代表的なのが、厚生労働省の人材開発支援助成金です。
人材開発支援助成金には「事業展開等リスキリング支援コース」があります。その支給要領(令和8年8月3日以降に計画届を出すものに適用)では、通常分の経費助成率は中小企業で75%、大企業で60%です。賃金助成は、1人1時間あたり中小企業1,000円、大企業500円です。
ただし、条件は細かく決まっています。たとえば、令和8年8月3日以降に提出の計画に基づくeラーニングの訓練は、同じ人について1年度1回までとされています。使えるかどうかは、研修を決める前に、労働局や社会保険労務士に確かめるのが確実です。
研修会社の側も、助成金の相談に対応しているところがあります。Uravationは事業展開等リスキリング支援コースの利用の相談に対応し、経営者・役員本人は対象外と案内しています。テックキャンプ FDEは、人材開発支援助成金の活用で最大45%と案内しています。
研修費の予算の立て方は教育研修費の予算の記事にまとめています。助成金は後から入るお金なので、いったん全額を払える予算を組んでおきます。
よくある質問
- Q. プログラミングができなくてもFDEになれますか?
- 社内の業務を対象にする社内FDEなら、なれます。非エンジニアを対象にしたFDEの育成サービスも出ています。最初に要るのは技術より、自分の業務の手間を回数と時間で言えることです。作る力は、生成AIや表計算の機能を使うところから少しずつ身につけます。
- Q. 非エンジニアのFDEは、どのくらいの期間で育ちますか?
- 最初の区切りは3か月が目安です。3か月で、自分の業務で1つ成果を出し、数字で説明できる状態を目指します。一人で別の部署の業務に入れるようになるには、この3か月を何回か繰り返す必要があります。
- Q. 最初はどの業務から自動にすればよいですか?
- 人の判断が要らず、月の時間が長い業務からがおすすめです。作りやすさで選ぶと、効果が小さく、上司に成果を説明しにくくなります。毎回その場で判断する業務は、人が続けるものとして外しておきます。
- Q. 非エンジニアのFDEの候補はどう選べばよいですか?
- 業務の手間に自分で気づき、頼まれなくても工夫してきた人が向いています。技術の知識は選ぶ理由にしなくてかまいません。候補を選ぶ面談の質問は、育成板の「FDE候補の面談シート」に10問まとめています。
- Q. 外部の研修と社内での育成は、どちらがよいですか?
- どちらか一方より、組み合わせるのが扱いやすい形です。業務の洗い出しは社内で、作る練習は研修や伴走で、使われているかの確かめは社内で行います。研修を選ぶときは、自社の実際の業務を題材にできるかを見ます。
- Q. FDEの育成に助成金は使えますか?
- 人材開発支援助成金が使える場合があります。事業展開等リスキリング支援コースの支給要領では、通常分の経費助成率は中小企業で75%です。ただし訓練の形や回数に条件があるので、研修を決める前に労働局などで確かめてください。
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